学生が「教育社会学」の授業で作成した問題

[前ブログの2017年11月19日の記事]

部屋を掃除していると、本棚の奥から「教育社会学期末レポート」なるクリアファイルが出てきた。ファイルを開けると、何年も前に自分が担当していた教職課程の授業(教育社会学)の期末レポートが出てきて、あらためて読むとどれも面白かった。

 

何をテーマとするレポートを出すべきか当時とても悩んでいて、あれこれ考えたあげく、「そうだ、この授業の内容を踏まえて、学生自身にこの授業の試験問題を考えてもらおう」ということになり、学生には試験問題とその模範解答を作成・提出してもらうことにした。

 

以下、学生自身が作成した三つの問題になる。文のねじれや表現で少し気になるところもあるが、そのまま引用する。なお、①③は同じ学生が作成した問題である。

 

**********

①授業内で扱った志水宏吉の第三章「学力の基礎はどう形作られるか」(『学力を育てる』岩波書店、2005年)の中では、イギリスの教育社会学者B.バーンスティンの「言語コード論」が取り上げられている。彼は実証研究を積み重ね、“話し言葉の表出を規制する原理”と説明される「言語コード」という考えを導き出した。さて、言語コードは「精密コード」と「限定コード」に分けられるが、それぞれについて簡潔に説明せよ。

 

②新たに仕事を始めても辞職、あるいは何らかの理由で解雇され、ホームレス生活を送らざるを得ない人がいる。このような人たちを表わす問題を「意欲の貧困」と呼んでいるが、(1)「意欲の貧困」とはどのような状態のことを指しているのか。簡潔に説明しなさい。(2)また「経済的困窮」と「意欲の貧困」にはどのような関係があるのか。具体的な“溜め”の例を挙げながら説明しなさい。

 

③授業内で扱った広田輝幸の『日本人のしつけは衰退したか』では、子どものしつけの担い手としての、家族・地域共同体・学校の三者関係は、戦後の日本社会で大きく変化してきたことが述べられている。どのように変化していったのか、下記の単語を最低一回以上使用しながら述べよ。

 

地域共同体 学校 家族 パーフェクトチャイルド パーフェクトマザー 責任 従属

**********

 

例えば、○○を踏まえて△△に関する理解が■■に到達しているかどうかがわかるように作問しなさい、というような詳細な指示はしていなかったので、基本的には〈覚えている/覚えていない〉という次元での理解を問う問題文になっているが、どれも簡単に解答できるわけではない良問になっているように思う。

 

学生自身が作問し模範回答も作成するというレポート課題を出したとき、学生たちは戸惑っていたが、提出後に話を聞いてみると、結構面白がってやってくれたようだった。上記の問題が「最高」と言いたいわけではなく、またこのような課題が最適と考えているわけでもないが、「論題」を工夫すれば、学生はこちらが想像した以上に考えてくれるのだな、と感じたということ。