質的調査に基づく論文(適宜更新)

同僚だった竹端寛先生(現在:兵庫県立大学)が次のツイートをしていたことを受けて、思いつくものをリプライでお伝えしていたら、「まとめるとどなたかの役に立つのでは?」とのご提案をいただいた。

以下、思いつくものを列挙したい。竹端先生がどのようなアプローチを「エスノグラフィー」と呼んでいるのかわからないが、さしあたりそれは脇に置く。

ウェブからダウンロードできるものに限定し、かついま思いついたものを列挙しているだけなので、読んだ当時「これは素晴らしい」と思った論文でも記載していないものがある(思い出したら書き足す)。私が社会学の論文をよく読むからかもしれないが、日本教社会学会、日本労働社会学会には質的調査に基づく素晴らしい論文が多数あり、読んでいてとても勉強になる。日本質的心理学会にも(その学会名どおりに)多数の質的調査に基づく論文があり、時間があれば読んでいる。

●新谷周平「ストリートダンスからフリーターヘ:進路選択のプロセスと下位文化の影響カ

●新谷周平「フリーター選択プロセスにおける道具的機能と表出的機能 :現在志向・「やりたいこと」志向の再解釈

●新谷周平「学校外支援の構造と機能 : 公的中高生施設「ゆう杉並」とその周辺のエスノグラフィー

●野村駿「なぜ若者は夢を追い続けるのか:バンドマンの「将来の夢」をめぐる解釈実践とその論理

●野村駿「不完全な職業達成過程と労働問題:バンドマンの音楽活動にみるネットワーク形成のパラドクス

●尾川満宏「地方の若者による労働世界の再構築:ローカルな社会状況の変容と労働経験の相互連関

●知念渉「〈インキャラ〉とは何か:男性性をめぐるダイナミクス

●知念渉「〈ヤンチャな子ら〉の学校経験:学校文化への異化と同化のジレンマのなかで

●伊佐夏実「教師ストラテジーとしての感情労働

●盛満弥生「学校における貧困の表れとその不可視化:生活保護世帯出身生徒の学校生活を事例に

志田未来子どもが語るひとり親家庭:「承認」をめぐる語りに着目して

●小西祐馬「生活保護世帯の子どもの生活と意識

●大澤真平「子どもの経験の不平等

●山根清宏「「引越屋」の労働世界:非正規雇用で働く若者の自己規定

●橋口昌治「揺らぐ企業社会における「あきらめ」と抵抗:「若者の労働運動」の事例研究

●原未来「対象関係組み替え過程としての「ひきこもり」と〈回復〉 : 当事者の語りと支援実践から

●松永伸太朗「アニメーターの過重労働・低賃金と職業規範:「職人」的規範と「クリエーター」的規範がもたらす仕事の論理について

●朴知遠「外国人留学生労働者のエスノグラフィー:Z居酒屋の参与観察を通じて

●小西二郎「仕事は好きなんすよ。でもやっぱ、友達と家族が一番すね:北海道小樽市の「ノンエリート」青年

●木村涼子「教室におけるジェンダー形成

●湯川やよい「アカデミック・ハラスメントの形成過程:医療系女性大学院生のライフストーリーから

●上原健太郎ネットワークの資源化と重層化:沖縄のノンエリート青年の居酒屋経営を事例に

●岸政彦「建築労働者になる:正統的周辺参加とラベリング

●乾彰夫他「「新時代」を働き・生きる若者たち:高卒5年目の人生経路 : 「世界都市」東京における若者の<学校から雇用へ>の移行過程に関する研究IV

●宮崎あゆみ「ジェンダー・サブカルチャーのダイナミクス:女子高におけるエスノグラフィーをもとに

●内田康弘「サポート校生徒と大学進学行動:高校中退経験者の「前籍校の履歴現象効果」に着目して

●石川良子「「ひきこもり」と「ニート」の混同とその問題:「ひきこもり」当事者へのインタビューからの示唆

●荻野達史「相互行為儀礼と自己アイデンティティ:「ひきこもり」経験者支援施設でのフィールドワークから

●御旅屋達「若者自立支援としての「居場所」を通じた社会参加過程 : ひきこもり経験者を対象とした支援の事例から

●相良翔「ダルクにおける薬物依存からの回復に関する社会学的考察:「今日一日」に焦点をおいて

●窪田玲奈「“地方の地方”における若者の「地元つながり」:夕張高校OB・OG調査を基に

●伊藤秀樹「高等専修学校における密着型教師-生徒関係 : 生徒の登校継続と社会的自立に向けたストラテジー

●伊藤秀樹「高等専修学校における進路決定:進路展望を形成する「出来事」の分析より

●中村英代「「病いの語り」と「治癒の語り」:摂食障害の「回復者」への質的調査から

●小川さやか「SNSで紡がれる集合的なオートエスノグラフィ:香港のタンザニア人を事例として

●ケイン樹里安「「踊り子」とは誰か:よさこいとナショナリズムの共振をめぐるフォト・エスノグラフィー

【↓2022/07/14】

志田未来中学生の逸脱をめぐるエスノグラフィ

●菊池美由紀「ボーダーフリー大学におけるキャリア科目担当教員のストラテジー

●石野未架「教室のなかの教師の「権力性」再考

●鈴木雅博「下校時刻は何の問題として語られたか

●久保田裕斗「小学校における「合理的配慮」の構成過程

●粕谷圭佑「「社会化」過程の再特定化

藤根雅之「オルタナティブスクールの連携の技法

●白松賢「解釈学的アプローチによる教師研究の可能性

●成澤雅寛「学習と居場所のディレンマ

●梅田崇広「〈いじめ〉をめぐる語りの構築過程

●横山愛「教師は指名されていない児童の発話をどのように授業に活かすのか

●沼田あや子「発達障害児の母親の語りのなかに見る家族をつなぐ実践

●安藤りか「頻回転職の意味の再検討

●木下衆「研究者によるケアを、誰がいかに支えるか」(PDF)

●三品拓人「児童養護施設で暮らす小学生男子たちにとっての〈友人〉

●尾添侑太「居場所概念の再検討

福島智子「私は部外者それとも「準家族」?

●松村淳「後期近代における専門職の職能拡張をめぐる一考察

●相良翔「更生保護施設在所者の「更生」

●磯直樹「パリ郊外における柔道実践

●松田洋介「災害リスクとペダゴジー

●中村英代「「ひとつの変数の最大化」を抑制する共同体としてのダルク

●海老田大五朗・杉本隆久「不可知とされがちな領域への接近

【↓2022/11/15】

松木洋人「子育てを支援することのジレンマとその回避技法

松木洋人「「保育ママ」であるとはいかなることか

●戸江哲理「乳幼児をもつ母親どうしの関係性のやりくり

●戸江哲理「例外扱いする特権:母親による子どもに対する「この人」という指示

●戸江哲理「子育て仲間を「する」:「よその子」に対する注意の会話分析

●藤田結子・額賀美紗子「働く母親と有償労働の意味:非大卒女性の稼ぎ手役割と職業役割をめぐる意識

●藤田結子・額賀美紗子「家庭における食事の用意をめぐる意味づけ:質的調査からみる育児期就業女性の対処戦略と階層化

●湯澤直美「貧困の世代的再生産と子育て:ある母・子のライフヒストリーからの考察

●齋藤圭介「男性の生殖経験とは何か:育児に積極的にかかわっている男性へのインタビュー調査から

【↑2022/11/15】

また、数年前に出た前田拓也他編『最強の社会調査入門』(ナカニシヤ出版)には特設ページがあり、各章に関連した論文リンクが張られており、読み応えのある複数の論文をダウンロードできるようになっている。

maedat.com

一橋大学大学院社会学研究科先端課題研究19「質的研究アプローチの再検討」のウェブサイトでは質的研究アプローチに関する文献レビューがなされていて参考になる。

www.soc.hit-u.ac.jp

エスノメソドロジーに関する書籍や論文は次のサイトが専門家によって作られている。

emca.jp

「そういえば、組織エスノグラフィーについては土地勘がないな」と思い、検索すると、田中研之輔先生のnoteに関連論文がまとめられていた(いくつかリンクがきれているものもあるようだが)。ちなみに、私にとって田中先生は『丼家の経営:24時間営業の組織エスノグラフィー』(法律文化社)の著者という印象が強い(他にもたくさん研究されていることは知っているが)。

note.com

note.com