大学教員とメンタルヘルス

結構前に買ったのだが、最近ようやく読み始めた本がある。

www.routledge.com

この本のレビューとしては次のものがある。

blogs.lse.ac.uk

なぜこのような本を読んでいるのかというと、院生時代から今に至るまで「しんどい」と感じることが多いからという理由もあるが、同じ業界の友人や知人、職場の同僚から「憂鬱さ」について聞くことが多いという理由もある。心療内科に通っているという話も何度も聞いてきた。

何年か前から大学教員(院生の方を含む)の働き方に強い関心があり、書籍や論文を読んできた。その流れで今年は二つの論文を出した。

・ロザリンド・ギル(児島功和・竹端寛訳)「沈黙を破る―新自由主義化する‟大学の隠された傷”」『法学論集』第87号

・児島功和「子育て中の大学教員はどのように仕事と家庭生活のバランスをとっているのか」『現象と秩序』第15号

後者は「憂鬱さ」に焦点をあてたものではないが、大学教員にとって研究とはいかなる仕事なのか?という関心がまずあり、その中で子育てにも関心が向き、調査を実施した。前者は「憂鬱さ」のみを扱っているものではないが、学術の世界がいかにその住民を不安に陥れているかということを取り上げていた。ちなみに、上記のテーマでググってみたところ、大学のことを「anxiety machine」と表現している記事を見つけて納得したことがある。

TwitterFacebookをしていると、「本が出ました!」「論文が出ました!」「科研採択されました!」「学振通りました!」という明るい投稿が目につき、私は自分の至らなさに定期的に落ち込むのだが、他方、周りに目を向けると、鬱に苦しむ同じ業界の方がたくさんいるという現実。いわゆる「若手」を中心に雇用の不安定さが常態化しているだけでなく、専任教員は専任教員でオーバーワークが蔓延しているとも感じる。「憂鬱さ」に繋がる状況はあちらこちらにあると考えている*1

私自身は「大学教員とメンタルヘルス」というテーマで調査をしたいと思ってきたが、現時点では直球では扱えていない。ただ、きわめて重要なテーマだと思っており、今後(調査主体が誰であれ)大規模な形で調査がなされればいいのにと考えている。

*これを書きながら、こうした問題で書いていた方がいたはず…と思い、探してみたら、横路佳幸「大学院生におけるメンタルヘルス問題について」『人文×社会』第1号(創刊号)だとわかりました。

*1:こう書いているからといって、大学教員は他の仕事以上に大変なんですと言いたいわけではない。雇用の不安定化やオーバーワークはこの社会のあらゆるところに蔓延していると思われる以上、憂鬱さに苦しむ方はどこにでもたくさんいるだろう。