大学院を出て大学教員以外のキャリアを歩むこと
7月4日に開催予定だったイベントを体調不良で延期/中止した。今から考えれば、ワクチン接種の副反応だったのではないかと思うが、とにかく高熱で開催できなかった。
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その後、授業や学内業務の合間をぬって、中原淳・小林祐児・パーソル総合研究所『働くみんなの必修講義 転職学:人生が豊かになる科学的なキャリア行動とは』(以下では『転職学』)を読んだのだが、とても面白かった。
簡単な感想はTwitterでも書いた(ココ)。今回書きたいのは、本書で書かれていることは、先のイベントで紹介しようと思っていた Christopher L. Caterine『Leaving Academia: A Practical Guide』(Princeton University Press, 2020)の議論と重なるところが多いということだ。『Leaving Academia』は、大学院で博士号を取得した研究者が大学や学術界の「外」で職をいかにして得たのかという話である。
『Leaving Academia』の内容を一部紹介する。これはイベントで配布予定だった資料のごく一部になる(訳が粗いのは許してください)。(大学院を修了して民間企業の研究所でお仕事をされている方のお話を含む)完全版は参加を希望してくださった方に後日送りする予定。
『Leaving Academia』著者が強調するのは、研究活動を通して身につけてきたことを大学や学術界の外の他者でも‟容易”に理解できるよう「再文脈化」することの重要性である。そして、そのためには練習が必要であり、他者のサポートが必要であるという。具体的には著者は、インフォメーショナル・インタビューを繰り返すことを勧めている。企業等で働く方のお話を聞くなかで、自分が身につけてきた言葉や技能がいかなるものであるかを自覚し、それを他者にも理解できるようチューニングする練習が大切なのだ、と。
『転職学』は単に〇〇すれば新しい仕事につけますよと案内するのではなく、新しい職場でよい形で働き続けるためにはどうすればいいのかというヒントを与えてくれる。もっというと、「仕事と幸福」の関係について読み手に考えるヒントを与えてくれるが、この点は『Leaving Academia』も同様だといえる。
『Leaving Academia』はあくまでアメリカにおけるアカデミック・キャリアの話であるし、『転職学』は民間企業で働く方、それもいわゆるホワイトカラーの方を想定していると思われ、その点での違いはあるが、上述の意味で共通点はあり、ほぼ同時期にこの二つの本を読んでいて大変面白かった。
そして、この記事を書いているときに、西田亮介さんの一連のツイートを目にして、『Leaving Academia』との共通点も感じた。
各専門性のほかに、少し抽象度あげると、こういうジェネラルな能力を博士課程では養っている、と見ている。こうした側面についても、各D学生さんは自分なりにいろいろ考えて、言語化してみるとよいとも思っています。
— 西田亮介/Ryosuke Nishida (@Ryosuke_Nishida) 2021年7月28日
その過程で、我々が一般的に想起するような「回転の速さ」みたいなものがかなり表層的で、その他の水準や側面でのアタマの良さやアタマの体力、洞察力みたいなものについて理解できたり、養えるようになると、研究に限らず、かなりジェネラルに博士研究におけるトレーニングが「役に立つ」のでは、と。
— 西田亮介/Ryosuke Nishida (@Ryosuke_Nishida) 2021年7月28日