2022年の勉強会の記録

2019年から勉強会を開催してきた。過去の記録は次のとおり。

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2022年の記録は次のとおり。

 

第26回:志田未来『社会の周縁を生きる子どもたち』明石書店

www.akashi.co.jp

第27回:江原由美子「『男はつらいよ男性学』の限界と可能性、②平山亮「『男性性による抑圧』と『男性性からの解放』で終わらない男性性研究へ」

www.jstage.jst.go.jp

第28回:エリーザベト・ベック=ゲルンスハイム「ポスト・家族らしい家族への途上」、「仕事の分担、自己イメージ、ライフ・プロジェクト」(『個人化の社会学ミネルヴァ書房

www.minervashobo.co.jp

第29回:互いの近況報告

 

なんと4回しか勉強会を開催しなかった!2019年は11回、2020年は7回、2021年は6回、2022年は4回。順調に(?)減っている。メンバーのスケジュールがあわないこともあるが、主催者である私がメンバーになかなか声をかけないことが一番大きい。2023年はもう少し開催回数を増やしたい。私にとって勉強会は科研の研究会と同様に数少ない「研究仲間」と会える場なので。

 

勉強会で読んだ文献や論文はどれもよかったが、エリーザベト・ベック=ゲルンスハイムの論稿は自分が日頃モヤモヤと考えていることに言葉を与えられたと感じるもので、大変有意義だった。院生時代に英語で同書を読んでいたが、今回邦訳で読んで当時の自分の理解がいかに浅かったかを思い知ることとなった。訳者と出版社の方には感謝したい。

 

同論文からいくつか印象に残った言葉を引用したい。

第6章「ポスト・家族らしい家族への途上」

家族生活はもはや一つの場所で起こらない。いくつもの場所に分散している。まして共通するテンポの周期もない。というのも、幼稚園や学校や若者組織の予定表、妻や夫の勤務時間、店の営業時間、公共交通機関の時刻表などのさまざまな社会制度によって、家庭生活が構造化されているからである。これらすべてにおいてもっとも重要なのは、勤務時間のフレキシビリティ化が家族生活に直接押し入ってきたということだ。それは、継続性や安定性、調整といった、一緒に生活するために必要なこととは一致しない、不規則で変動するテンポを作り出す

(153頁)

 

現代の家族生活のさまざまな事例が示してきたように、互いに異なる個人誌をまとめるためには、かつてよりもずっと多くの努力が必要となる。かつて人々は、いざというときには規則や儀式に頼ることができたが、今日予想できるのは、日常生活を上演し、アクロバットのようにバランスをとって調整するという展望である。(中略)自ら作り出す関係の日常的な細部について、人々が選択し、交渉し、決定するとき、愛や苦しみ、多様性という「正常な混沌」が、大きくなり、発展しているのである

(164頁)

 

第7章「仕事の分担、自己イメージ、ライフ・プロジェクト」

女性の期待と要求は、男性にとっては、不愉快であるだけでなく、かつては自明だと思っていた多くの特権の停止、男性の自己イメージや自信の深く根づいた諸要素への攻撃を予兆する。(中略)それゆえ男性にとっても女性にとっても、家事の分担という争点は、はるか深層のアイデンティティ、将来への計画、自尊感情をかき乱す。結果となるテーゼは、結婚あるいは恋愛関係のなかで、仕事の分担をめぐって衝突が起きるときに問題となっているのは、家事以上のものだということだ

(177頁)

 

家事をめぐる交渉が刺々しく苦々しいものになってしまうのは、それが進行中のアイデンティティ闘争の一部だからである

(178頁)