大学教員というキャリア選択と地域移動

専任教員としての職を得ようとしている研究者にとって、地理的にどの範囲で求職活動をするかは大きな問題になるはずだ。

 

例えばパートナーが東京で働いていてその仕事をずっと続けたいと考えている、また自分とパートナーの子供が未就学児だとして、パートナーや子供と一緒に住むことができない地域の大学に行くかという問題。近年は初職が任期付きという場合も多いが、任期付きでも「専任教員に一度でもなっておくと次に繋がりやすい」とされる状況があるなか、パートナーや子供と離れて任期付きの職を選ぶかという問題。多くの研究者がこのことに悩んでいると思われる。

 

なお、地域移動と関連したキャリア選択には男女差もある。以下は、米澤彰純・佐藤香編『大学教員のキャリア・ライフスタイルと都市・地域―「大学教員の生活実態に関する調査」から』(2008年3月、広島大学高等教育研究開発センターの表16(同報告書27頁)、表18(同報告書29頁)である*1*なお、上記リンク先はPDFファイル

 

f:id:AcademicStories:20210613112425j:plain

f:id:AcademicStories:20210613113931j:plain

 

各カテゴリーの定義含む調査の詳細についてはリンク先を見ていただきたい。表16からは、男性教員よりも女性教員のほうがパートナーと離れて暮らす割合が高いこと、表18からは、男性教員のパートナーの約6割が無職であるのに対して、女性教員のパートナーの約9割が有職者でかつフルタイムであることがわかる*2

 

これまでやってきた研究を活かせるポストに就きたいが、パートナーの仕事や人生も尊重したい、そして子育てを一緒に暮らしながらパートナーと行ないたいと考えると、キャリア選択をめぐる葛藤はきわめて強いものになるだろう。「この場所にずっと住んでいたい」という希望が強い場合、大学教員というキャリアは人生の選択肢として外れることもあるだろう。

 

こうしたことに加えて親の介護をどうするということが関わってくると、この問題は更に複雑になる。

 

上記のことは私自身が悩んできたことであり、研究活動として追及していきたいことでもあるが、「みんなどうしてるの?」とざっくばらんに同業者と話したいことでもある。

 

みなさんはどうしているのだろう?

 

*1:この報告書はここで取り上げたこと以外もとても面白い。

*2:この報告書のもとになった調査は15年前のもので、現在と同じかどうかはわからないが、例えば2020年に発表された研究者を対象としたGEAHSSの調査結果を見ると、大まかな傾向は同じと思われる