アンソニー・ドーア『メモリー・ウォール』の一節
数年前に読んだ小説の引用メモが出てきた。
とても印象的な言葉だったので、忘れないようにというだけで記事を書く。その小説は、アンソニー・ドーア『メモリー・ウォール』(新潮クレスト・ブック)。
十代の頃は小説をよく読んでいたのだが、忙しくなって全くといっていいほど読まなくなってしまった。
長い月日が流れて、たまたまtwitterでジョン・ウィリアムズ『ストーナー』が絶賛されていたので読むと感動してしまい、それから英語圏の小説を読む方のおススメ本を時々読むようになった*1。『メモリー・ウォール』はそうした中で出会った小説。
それで、以下が『メモリー・ウォール』の一節。
地球のあらゆる場所で、果てしない数の記憶が消え、光り輝く地図が墓へと引きずりこまれる。けれども、その同じ時間に、子どもたちが動きまわり、彼らにとってはまったく新しい領域を調査する。子どもたちは暗闇を押し戻す。記憶をパンくずのようにまき散らして進む。世界は作り直される。(p.306)
コロナ禍によってこれまで以上に「今ここ」の情報を求めるためにネットに張りつくようになったと感じている。そして、絶望したり、憤りを感じたりと感情が(アテンション・エコノミーのもとで)動員されることに疲れを感じている。
そうした疲労を鎮めるためにも『ストーナー』や『メモリー・ウォール』のような小説を読めればいいのだけれど。
*1:現在はまた時間がなくて読めなくなってしまった。悲しい